中西名誉園長のコラム 第18回 再び斑入り植物展について

図1.斑入り植物展
図1.斑入り植物展

 

2016年5月3日から斑入り植物展を開催します(図1)。主として古くから日本で栽培されているいわゆる古典園芸植物を中心に展示します。今回は新たに斑入りのアオノクマタケラン、イタドリ、ハナイカダなどを加え、これまでよりもさらに種類数を充実した展示となっています。そこで、斑入り植物についてもう少し詳しく紹介しましょう。
 

斑入りとそのいろいろ

植物の葉はふつう緑色をしていますが、葉の一部が緑色をなくし、白色となったり、黄色になったりしているのを斑入(ふい)りとよんでいます。時には紅色を帯びるものもあります。斑入りの「斑」を江戸時代には「布」と書いたり、「錦葉」とよんでいました。

斑の入り方にはいろいろあり、それぞれ名前がつけられています。斑点状に入ったもの:星班、散り班、縞状に入ったりもの:縞斑、周囲に縁取るように入ったりもの:覆(ふく)輪(りん)、葉の先端に班が入ったりもの:爪斑など、いろいろな斑入りがあり、それぞれ名前をつけて区別してきました(図2)。

 

図2.斑入りのいろいろとその名称1

 

図2.斑入りのいろいろとその名称
図2.斑入りのいろいろとその名称

 

江戸時代の流行

江戸時代は園芸が盛んになった時代で、鉢植えが普及し、庭を持たない庶民も草花の栽培を楽しむようになりました。特に江戸の中期以降は、珍しい品種を集めることが流行し、斑入り植物も珍しいものとしてもてはやされました。1827年には『草木(そうもく)奇品家(きひんか)雅(が)見(み)』(金太著)に513種類が紹介され、1828年には水野忠(ただ)暁(とし)が斑入り植物ばかりを図入りでまとめた『草木(そうもく)錦(きん)葉集(ようしゅう)』を著しました。この本の中には1031種類の斑入り植物が掲載されています。この中には今では見られない斑入り植物も紹介されています。

 

図3.草木錦葉集に描かれた斑入り植物1

 

図3.草木錦葉集に描かれた斑入り植物
図3.草木錦葉集に描かれた斑入り植物

 

斑入りの古典園芸植物

古くから日本の観葉植物として栽培されてきた古典園芸植物の中には1種でいろいろな斑入りのものが栽培されてきました。しかもそれに特別な名前を付けていたものも少なくありません。主なものを以下に紹介しましょう。

ハラン(ユリ科)

中国原産あるいは日本原産の説もある多年草で、古くから庭園に植えられたり、寿司などの仕切りに使われています。葉に点々と白い星が入った星斑のもので、小型のものは「アリサンハラン」とよばれており、「星月夜(ほしづくよ)」ともよばれています。江戸時代の有名な園芸書で1695年に発行された『花壇地錦抄』にも出ています。葉の先だけに三角の斑が入る「ツメフハラン」、中でも深爪斑の「旭」や、白い縞が入る「縞斑」のもの、中央に黄白色の線が入った「一文字」などがあります。栽培は簡単で、日当たりの悪い庭に向いています。

図4.縞斑ハラン
図4.縞斑ハラン

 

図5.星月夜
図5.星月夜

 

図6.旭
図6.旭
図7.一文字
図7.一文字

ツワブキ(キク科)

日本南部原産で、日本庭園に植えられる常緑の多年草。晩秋に黄色の花を咲かせます。白掃け込み斑や黄色星斑などがよく植えられていますが、黄縞状斑や白地緑砂子斑などや周囲が白くなる金環などさまざまな斑入りのものが知られています。葉はふつう円形ですが、切れ込みが深くなったモミジ葉のものや、縁が細かく波打つ獅子葉のものもあります。また、頭花の変異もあり、舌状花が管状になったものや、八重咲きのものなども知られています。これらのツワブキの品種を集めているマニアもいます。栽培は簡単で、半日陰を好みます。

 

図8.天星(天の川) 
図8.天星(天の川)

 

図9.乱扇
図9.乱扇

 

図10.金環
図10.金環
図11.星斑モミジ葉
図11.星斑モミジ葉

ギボウシ類(ユリ科)

日本および朝鮮半島原産の落葉性の多年草で、高さが10cmほどの小さいものから、1mぐらいとなる大型のものもあります。シーボルトによってヨーロッパに導入され、その後、品種改良などがなされ、園芸化されました。日本でも江戸時代にいくつかの園芸品種がつくられ、コバキボウシの白覆輪である「文鳥香」もその一つです。形も葉の細いものから幅広い広卵形になるものまで、白覆輪から黄覆輪、白縞班、黄金葉とよばれる黄色い葉になるものなどさまざまで、これらをコレクションするのもおもしろいでしょう。半日陰のグランドカバーに向いています。

 

図12.パトリオット 
図12.パトリオット

 

図13.覆輪オオバギボウシ
図13.覆輪オオバギボウシ

 

図14.文鳥香(コバギボウシの白覆輪)
図14.文鳥香(コバギボウシの白覆輪)
図15.中白斑ギボウシ
図15.中白斑ギボウシ

マサキ(ニシキギ科)

海岸林に生育する常緑の低木で、古くから沿岸部の生垣に使われてきました。黄色の覆輪のものをキンマサキ、白色の覆輪のものをギンマサキ、中央部が黄色になるものをベッコウマサキと総称されていますが、さまざまな名前でよばれています。1827年の『草木(そうもく)奇品家(きひんか)雅(が)見(み)』にはすでにいくつかのマサキの斑入り植物が紹介されています。その中で、斑が黄色と白色が混じったものがあり、キンギンマサキと呼ばれています。何とか入手したいと思っていますが、まだ見たことがありません。

マサキは挿し木で簡単に増やすことができ、栽培も簡単です。斑入りのものは鉢植えにし、小さく育てると観賞用になります。

 

図16.キンマサキ
図16.キンマサキ

 

図17. ベッコウマサキ
図17. ベッコウマサキ

 

図18.ギンマサキ
図18.ギンマサキ
図19.オウゴンマサキ
図19.オウゴンマサキ

テイカカズラ(キョウチクトウ科)

常緑で木性のつる植物です。野外では樹木にからみついて大きく成長しますが、庭園では地面にはわせたり、フェンスにからませて目隠しとして利用されています。古くからヨーロッパにも導入されて園芸化されています。新芽の白い初雪葛「ハツユキカズラ」は最近よく植えられていますが、江戸時代の『草木錦葉集』にも出ています。その他、新芽が赤くなり、その後薄黄色の班となる黄金錦や覆輪くずれのさまざまなものが知られています。栽培は簡単です。

図20.初雪葛(ハツユキカズラ)
図20.初雪葛(ハツユキカズラ)

 

図21.黄金錦
図21.黄金錦