中西名誉園長のコラム第15回 名誉園長おススメの植物&スポット[その9] ヤシの仲間2

名誉園長おススメの植物&スポットその7で、当園に栽培されている類似のヤシについて紹介しましたが、それに引き続き、さらに戸外に栽培されているヤシについて紹介しましょう。

 

4.クロツグ Arenga engleri Becc.(図1)

図1.クロツグ_thunb図1.クロツグ

 熱帯アジアから台湾、琉球列島の奄美諸島まで分布する高さ5m以下のヤシで、幹はあまり発達せず、根元から葉が束生します。葉の上面は深緑色ですが、下面は灰白色を帯びています。果実は球形で直径約2cm、橙黄色で、しだいに黒くなります。琉球列島では林の中でよく見かけ、クロツグが多く生育していると、いかにも熱帯の林に来たような雰囲気を出します。

当園にはビジターセンターの玄関前や、カスケードの下、芝生広場の入り口、ビロウ林などに見られます。寒さにはけっこう強いようで、冬でも葉が枯れることはなく、元気に育っています。小値賀島のお寺の境内にも植えられているのを見たことがあります。

 

5.ビロウ Libistona chinensis var. subglobosa(図2)

図2.ビロウ_thunb図2.ビロウ

 台湾の北から琉球列島を経て、四国南部、九州北部まで分布する亜熱帯のヤシで、宮崎県青島にはビロウ林があることで知られていますが、長崎県でも男女群島をはじめ、いくつかの無人島に群生地がありますし、本土側でも所々に植栽されているのを見かけます。果実は長さ1.8cmぐらいの楕円体で、緑黒色に熟します。種子はよく発芽しますので、繁殖は容易で、県内には野生化している所もあります。平戸島の群生地などは、かつて人が植えた可能性があります。新上五島町有川港の近くの小さい半島も植えたものが繁殖し、自然の群落のようになっています。沖縄ではクバと呼んでおり、葉から扇や笠を編んで利用していました。当園には多く植栽されており、駐車場からビジターセンターまでの道路沿いに植えられていますし、芝生広場の南側にはビロウ林があります。

 

6.シュロ Trachycarpus fortunei (Hook.) H. Wendl.(図3) とトウジュロ T. wagnerianus Becc.(図4)

図3.シュロ_thunb図3.シュロ 図4.トウジュロ_thunb図4.トウジュロ

 シュロは中国と日本に分布し、日本では九州南部に自生すると言われています。長崎県にも山地の谷沿いに生育しているものは、その生態から自生のものと考えられます。古くから人家付近に栽培され、葉柄基部の繊維はシュロ縄やたわし、葉は蠅たたきなどを作ったりして利用してきました。関東地方以西では、市街地周辺の林中に野生化しています。葉の裂片は垂れ下がり、葉柄は1~2mにもなります。シュロとよく似たトウジュロは葉柄が短く、1m以下、葉先が垂れ下がることはありません。姿がシュロよりも美しいということで、庭園などに栽培されます。中国大陸南部原産です。シュロもトウジュロも高さは7mぐらいの中型のヤシで、幹も細いのが特徴です。トウジュロはビジターセンターの横に植えられています。

 

7.チャボトウジュロ Chamaerops humillis L.(図5)

図5.チャボトウジュロ_thunb

図5.チャボトウジュロ

 地中海原産の小型のヤシで、トウジュロに似ていますが、それよりも小さいので名づけられたものです。しかし、シュロやトウジュロとは属が異なり、幹が単立することはなく叢生します。葉は硬く、青緑色で、葉柄には鋭い刺があり、よく観察するとシュロとは全く違った形質をしています。当園ではビジターセンターの入り口と、大温室の少し手前に植えてあります。寒さには少し弱く、野外に植えられているのは冬に暖かい当園だから可能と言えるでしょう。

 

8.シンノウヤシ Phoenix roebelenii O Brien(図6)

図6.シンノウヤシ_thunb図6.シンノウヤシ

 中国南西部から東南アジア原産で、カナリーヤシやナツメヤシと同じ属の小型のヤシです。シンガポールに住んでいたロエベレニイ(Roebeleni)氏が1889年にイギリスに持ち込んだものに命名されたもので、種小名は彼の名に因むものです。日本へは大正時代に伝えられました。成長は遅く、ふつう高さ3mほどにしかなりません。葉は鮮緑色で光沢があり、柔らかいので、観葉植物として鉢植えにされたり、南国では庭園に植えられたりします。果実は長さ1cmほどの長楕円形で、食べられますが、食べる部分は少ししかありません。種子で容易に繁殖しますので、落下した果実を拾って、植えておくと芽が出てきます。寒さには比較的強く、長崎県の低地ならば何とか越冬できるでしょう。