中西名誉園長のコラム 第11回 名誉園長おススメの植物【その7】ヤシの仲間

 長崎県亜熱帯植物園は広く、よく利用される遊歩道沿い以外にも興味深い植物があります。中にはあまりスタッフも知らないような珍しい植物もあります。そんな植物も含めて、名誉園長おススメの植物を紹介しましょう。植物園を訪れた時には、是非探してみてください。

ヤシの仲間

 熱帯や亜熱帯の代表的な植物と言えば、まずヤシの仲間があげられるでしょう。世界の熱帯を中心に3000種以上があると言われています。最も北に分布するヤシ科植物であるシュロは日本の本州まで分布していますし、ビロウは九州北部まで、クロツグは琉球列島北部まで分布し、熱帯に近づくほど種類が多くなります。
当植物園では20種ぐらいのヤシが栽培されていますが、半数以上が野外で見られます。植物園の門を入ると、すぐ左側に玄関まで小さなヤシがたくさん見られます。これがシンノウヤシです。よく見るとその山側に少し大きな灰緑色の葉をしたヤシがありますが、これがヤタイヤシです。右側には中ぐらいの大きさのビロウ、さらにその海側に大きなワシントンヤシモドキがあります。またビジターセンターの玄関前にもいくつかのヤシが見られます。当植物園のヤシ科植物について、野外に生育しているものを中心に紹介しましょう。今回はよく似た2種ずつの区別を示しておきますので、これを知っておけばあなたもヤシ博士になれるでしょう。

1.ワシントンヤシ Washingtonia filifera (Lindl.) H. Wendl.(図1)と
ワシントンヤシモドキ W. robusta H. Wendl.(図2)

i20140515-1 図1.ワシントンヤシ i20140515-2
図2.ワシントンヤシモドキ

 園内に最も多く、大きなヤシはワシントンヤシモドキです。県内にもあちこちで見られますが、一定の面積の中でこれだけ多くのワシントンヤシモドキが見られる所は、日本でも珍しいでしょう。ワシントンヤシと似ており、しばしば混同されています。ワシントンヤシは北アメリカ西南部原産で、幹が太く、直径50cm以上になり、葉の裂片の縁は顕著に糸状にさけます。ワシントンヤシモドキは、北アメリカ南部からメキシコにかけて分布し、幹が細く直径は30cmぐらいで、根元は少し膨らんでいます。最近では両種の雑種がよく栽培されるようになりましたので、その区別がはっきりしないものもあります。ワシントンヤシは太くなりますが、成長が遅いので、ワシントンヤシモドキのように高くは伸びません。並木として植えられているものを見ると、時々太くて丈が低いものが混じっていることがありますが、それがワシントンヤシです。園内にはカスケード下部の両脇や、芝生広場の南西部の縁に見られます。
ワシントンヤシモドキはあまりいい和名ではないかもしれませんね。ワシントンヤシは別名オキナヤシ、ワシントンヤシモドキは別名オニジュロと言う名前もあります。

2.ヤタイヤシ Butia yatay (Mart.) Becc.(図3)と
ブラジルヤシ B. capitata (Mart.) Becc.(図4)

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図3.ヤタイヤシ
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図4.ブラジルヤシ

 どちらもあまり大きくならない中型のヤシで、葉の下面が灰緑色をしており、ひじょうによく似ています。耐寒性が優れ、公園などにもよく植えられるようになりました。その違いは、ヤタイヤシの葉は長く、葉先はあまり内側に巻きませんが、ブラジルヤシは葉が短く、葉先が内側に顕著に巻きます。また、ヤタイヤシの花はクリーム色で果実は赤身がかった橙色ですが、ブラジルヤシは花が黄色で、果実は橙色です。ヤタイヤシの名は学名に由来し、アルゼンチン、パラグアイ原産です。ブラジルヤシは名前のように、ブラジル原産です。当園ではブラジルヤシは大温室の横と子ども芝生広場から冒険広場に中ぐらいのものが見られますが、ヤタイヤシは大温室の海側の遊歩道沿いに大きなものがたくさん多く見られます。是非その違いを見比べてください。最近はこれら両種の雑種ができ、ココスヤシの名で流通していますし、ヤタイヤシとブラジルヤシを区別せずに、ココスヤシと呼んだりもしています。ココヤシと紛らわしい名前ですね。

3.ナツメヤシPhoenix cactylifera L.(図5)と
カナリーヤシ P. canariensis Hort. ex Chabaud(図6)

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図5.ナツメヤシ
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図6.カナリーヤシ

 ナツメヤシは見たことがなくても、名前を聞いたことがあるでしょう。その果実はデーツと呼ばれ、熱帯では重要な食品の一つです。そのドライフルーツは日本でも売られています。紀元前から栽培されており、北アフリカか西南アジアの原産だと言われていますが、はっきりしません。葉は羽状複葉で、長さ3mにもなり、幹は太くなります。全体の姿はカナリーヤシとよく似ており、どちらも同じフェニックス(ナツメヤシ)属に含まれます。幹は単立しますが、しばしば根元から複数の幹が出て群生します。この性質はカナリーヤシにはありません。葉の色はカナリーヤシが光沢のある緑色をしていますが、ナツメヤシは灰色がかった濃緑色をしていて、小葉は向きがやや不ぞろいとなります。また、葉柄にはとげがあることなどで区別できます。
カナリーヤシは通称フェニックスともよばれ、公園や学校、役所などのロータリーなどによく植えられていますので、誰でも見たことがあるでしょう。日本では50年ほど前に各地で盛んに植えられるようになりました。和名のように大西洋にあるカナリー諸島原産で、英名をCanary Island Date Palm(カナリー島ナツメヤシ)と言います。
10年ぐらい前のことでしょうか、熱帯に分布するヤシの害虫であるヤシオオオサゾウムシ Rhynchophorus ferrugineus が沖縄を経て、宮崎県さらに長崎県へ北上侵入したことがありました。茎の先端の成長点を食害するので、県内各地のカナリーヤシの多くが枯れ、当園のものも1本を除いて枯れてしまいました。