中西名誉園長のコラム 第9回 名誉園長おススメの植物【その5】熱帯産サトイモ科植物3種

 長崎県亜熱帯植物園は広く、よく利用される遊歩道沿い以外にも興味深い植物があります。中にはあまりスタッフも知らないような珍しい植物もあります。そんな植物も含めて、名誉園長おススメの植物を紹介しましょう。植物園を訪れた時には、是非探してみてください。

[熱帯産サトイモ科植物3種]

 この仲間は、葉の形のユニークさや、他の樹木の幹によじ登ったり、着生したりする生態から、いかにも熱帯のジャングルを思わせる植物と言えます。熱帯は高温多雨で植物がよく茂りますので、植物同士の競争が激しく、少しでも葉を大きくして光合成を盛んにし、競争に勝とうと進化するでしょう。しかし、葉を大きくするとスコールのような激しい雨が降った時などは、葉が破れたり、水滴がついて重くて折れてしまうかも知れません。そこで、少しでも早く水滴を逃そうと、葉に切れ込みが入ったり、孔があいたりするようなものが進化したと考えられます。

 モンステラやその仲間の大きな葉をもつ、いかにも熱帯的な雰囲気をもつ植物は、どこの植物園の温室でも栽培されています。しかし、当植物園ではこれらの植物が野外で育っています。これは大変驚きです。その理由はこの植物園のある場所が、海に面した東斜面にあり、長崎半島でも特別に暖かい地区と言うことと、小さい株から育てて、寒さに対する抵抗力がついた結果と言えるでしょう。これらの植物は、当植物園の大温室にもありますが、是非野外で育っている姿を見て、それらの植物の生態と熱帯の雰囲気を感じ取ってください。

1.モンステラ(ホウライショウ) Monstera deliciosa Liebm.(サトイモ科)

モンステラ

 和名はホウライショウと名付けられていますが、ふつうモンステラと呼ばれています。モンステラの葉はおもしろく、長さ80cmにもなる楕円形をしてますが、いくつもの深い切れ込みがあり、さらにその内側に孔があいてます。モンステラの語源はモンスター(異常・怪物)からきており、その葉の形がひじょうに変わっているためにつけられました。その形のユニークさから、葉をデザイン化して、模様やマークとしても使われています。

 熱帯アメリカ原産のつる性の植物で、茎は太く、ところどころから気根を垂らし、樹木の幹を上ります。

 ふつうは温室に栽培されるものですが、当植物園では、屋外で育っています。大きなものは、こども広場の古代樹によじのぼっていますし、その海側にあるシダ園の岩の上などにも見られます。植物園の玄関にも少し小さいものが育っています。

2.ヒトデカズラ Philodendron selloum C. Koch(サトイモ科)

ヒトデカズラ

 モンステラと似ていますが、葉の切れ込みがずっと深く、切れ込みの仕方も違っており、裂片が重なることはありませんし、葉に孔があいていることもほとんどありません。また、茎は立ち上がり、多くの気根を出しますが、茎がつる状に伸びることはありません。その葉の形からヒトデカズラと名付けられています。

 南アメリカ原産ですが、モンステラよりも寒さに強く、長崎でも屋外で栽培されているのをまれに見ることがあります。当植物園では大きなものは、こども広場の海側にある遊歩道沿いに多く見られますし、果樹温室へ下る道の右側や、植物園の入り口などに見られます。また、大きな株は大温室にもあります。

 この植物には花が発熱するという大変おもしろい性質があります。花が咲いて1日間ぐらいは、花穂に触れると温かく感じます。温度を測ってみると40℃ぐらいにもなります。花粉を運ぶ昆虫をひきつけるために、エネルギーを使って発熱していると考えられ、このような植物を発熱植物とよんでいます。

3.ハブカズラモドキ Rhaphidophora decursiva (Roxb.) Schott(サトイモ科)

ハブカズラモドキ

 東南アジアから中国南部、台湾まで分布するつる性のサトイモ科植物で、西表島や石垣島にも見られるハブカズラ Epipremnum pinnatum (L.) Engl. とそっくりです。最近までハブカズラと混同されてきましたが、ハブカズラは葉の裏の主脈に沿って、直径2ミリほどの孔が開いていますが、ハブカズラモドキにはそれがありません。また、花の構造も違うようです。ハブカズラモドキもハブカズラも、大きな葉になると、切れ込みが多くなり、モンステラと似てきます。しかし、モンステラに比べると、葉の質が薄く、葉脈がはっきりとわかりますし、切れ込みが深く、葉全体が少し細長くなりヤシの葉を思わせるような形となります。

 当植物園には子ども広場の海側の遊歩道を進み、モノレールの線路の下を通ったあたりから左側をみますと、線路の向こうに木に絡みついているのが見られます。

 ハブカズラは木に絡みついている様子がハブに似ていることから、その名がつけられたと言うことです。これらの植物と似ていて、マングーカズラと言う植物も観葉植物として売られています。これはハブと戦うマングースから名づけられました。