中西名誉園長のコラム 第8回 お正月の植物展(2014)によせて

お正月の植物

 お正月は、門松や鏡餅と一緒に飾るダイダイ、ウラジロ、さらに玄関や床の間にはいつもと違った花を飾るなど、お正月独特のさまざまなおめでたい植物が用いられてきました。おめでたい植物と言えば、松竹梅を思い出す人もいるでしょう。この考えは奈良時代に中国から伝わったものです。マツとタケは風雪や厳寒に耐えて冬でも葉が緑色で落葉せず、特別な力があると信じられ、ウメは他の植物に先駆けて花を咲かせ、高潔、節操、清純の象徴とみなしていました。マツ、タケ、ウメについては誰でも知っていると思いますので、説明は省略しましょう。

 日本独特のおめでたいと考えられてきたお正月にふさわしい植物は、緑色の葉をもち、赤い実をつける植物です。今でこそ温室で栽培したり輸入したりして、冬でもいろいろな花が売られており、お正月の玄関を飾るのに困ることはありません。かつては冬の花のない季節に、緑色の葉をもち、赤い実をつける植物は、お正月飾りに重要なもので、それがいつしかめでたい植物とみなされるようになったと考えられます。それらの中で一番有名なものは、センリョウ(千両)とマンリョウ(万両)です。名前も高価なお金の単位がつけられ、それほど価値のあるものであったことがわかります。どちらも照葉樹林の林床に生育する低木で、古くから庭園に栽培されてきました。これらの植物よりも小さく、同じように赤い実のなるカラタチバナのことを百両、ヤブコウジのことを十両と呼び、鉢植えにして、お正月の植物として、楽しまれてきました。アリドオシと言うトゲを持つ植物も赤い実をつけますが、小さく、あまり見栄えのしない植物です。しかし、古くから「千両、万両、有りどおし」を言って、マンリョウやセンリョウと一緒に飾るといっそう縁起がいいと考えられてきました。

 お正月の植物展ではこれらの赤い実のなる植物を中心に、コバンソウ(小判草)やコバンムグラ(小判葎)などの小判がつく植物、その家によいことがあると花が咲くと言われているキチジョウソウ(吉祥草)、そして干支のウマのつく植物を展示しました。ウマはウシと共に日本では最も大きな動物ですので、大きな植物に対してウマやウシをつけてきたようです。しかし、ウマのつく植物はウシのつく植物よりも少ないようです。ウシは農耕用に使われ、身近な動物であったのですが、ウマは戦闘用に飼われていたせいか、ウシよりも身近な動物ではなかったからでしょう。

 ウマが大きいと言う意味でつけられた植物に、ウマノミツバ(セリ科)、ウマスギゴケ(スギゴケ科)、ウマスゲ(カヤツリグサ科)などが、ウマの形からつけられたものに、ウマノアシガタ(キンポウゲ科)、ウマノオ(ミズスギナの別名、ミソハギ科)、コマノツメ(アギスミレの別名、スミレ科)、コマクサ(ケシ科)があります。ウマノスズクサ(ウマノスズクサ科)は果実の形が、ウマのつけていた鈴に似ていることからつけらてれたものです。

ウマノスズクサ
ウマノスズクサ

中西名誉園長の企画展「お正月の植物展」は、2014年1月31日にて終了いたしました。